休日朝のマイブーム


平日の間は「土曜になったらあれもしよう、これもしよう」と妄想を膨らませていても、いざその日になるとベッドから起き上がるこのにもひと苦労。昼ごろやっとリビングに這い出すものの、午後までソファでごろごろ、結局やりたかったことはなにもできず……あー、こんなダメな休日どうにかしたい!

そこで、ふと思い立ったのが朝の散歩です。
世間じゃ近ごろは朝一番の習慣で人生が決まるようなことをあんまり言うので、ついついその気になったというのが正直なところで。

とはいえ、散歩に出かけるというのもなかなか億劫なもの。
まずはとにかくハードルを下げることが肝心です。

朝起きたら、ゆるいワンピースをすぽんと頭からかぶる。顔は洗ってもお化粧はしない、髪もとかすだけ。まだ頭がぼーっとしているうちに玄関をまたいでしまうのがコツです。

人通りもまばらな土曜の朝の住宅街を、夢の世界に半身をひたしたままふわふわと足を交互に前に出しているうち、だんだんと目が覚めてきます。

病は気からとは言いますが、その逆もまたしかり。
はやくもひんやりし始めた空気をひとりじめしていっぱいに吸い込めば、冴えなかった平日のこともふしぎとリセットされて、根拠もなく「大丈夫」という気がしてくるものです。

歩くことが目的なので行き先はどこでもいいのですが、近ごろの目的地はもっぱらわが家の鎮守さま(だと勝手に思っている)紅葉八幡宮。
住宅街の真ん中に佇む緑あふれるパワースポットです。

神様にはお願いをするんじゃない、報告をするんだ、というのは誰の言葉だったでしょう。
静かな境内で手を合わせて、今週の出来事や来週への意気込みを頭の中で言葉にしていると、ふしぎと気持ちが落ち着いてくるものです。

ここでは誰も何も言ってくれない、でもわたしの言葉で不愉快になったり、馬鹿にして笑ったりする人もいない。
そんなニュートラルな安心感に包まれて、物言わぬだれかにそっと語りかける時間は、常に人の目にさらされる現代では思ったより大事なのかもしれません。

さて、散歩も折り返し地点。そろそろ何かご褒美がほしいものです。
そう、たとえば、とっておきのモーニングとか。

「ぱん屋紺青」は、紅葉八幡宮のふもとで今年2月にオープンしたパン屋さん。
朝10時の開店とともに店内に入ると、なんとすでに10人ほどのお客さんが、トレーにパンを山積みにして並んでいました。

柔らかいパンツやくったりしたTシャツが多いのは、きっと家が近所だから。土曜と日曜の朝は甘いパン、月曜からは1斤買ったふわふわの食パンをスライスして、なるほどなるほど、そしてまた7日後にはここに来る。なんて素敵な生活でしょう。

そんな人たちの末尾に並んで、おかずパンと甘いパンをひとつずつ。ゆったりした革張りのソファに深く埋まって、コーヒーを含めば、完全に「整った」という感じが指先まで満ちていきます。

こうして休日朝の散歩は完了。

実際は、土曜の朝から予定が入って、こんなにゆったり時間が取れないこともありますが、こんな時間は大切にしたい、いや、こんな時間を大切にできる心を大切にしたいと思った朝でした。