1年ぶりにNew YorkとLos Angelesに行ってきた。
毎度アメリカの街の変わり様には本当にびっくりする。
また10年後には全く違う景色が広がっているのだろうが、この機にNYとLAにおいて2007年→2014年で最も大きく変わったエリアをメモしておく。
ジェントリフィケーションとは
近年世界的に大都市ではメインストリートのブランドストリート化・均一化が進む一方で、ジェントリフィケーションと言われる「地域高級化現象」が起こっている。
簡単に言うと、
・治安や住環境が悪いが賃料の安い都心周辺エリア(倉庫街など)にアーティストが住み着く
・ギャラリーやカフェができ始める
・感度の高いイケてる若者が引っ越してくる
・高級ショップ・レストラン、高級マンションの開発が進む。
・賃料が高騰。
・アーティストや地元住民は住めなくなって追い出される(また違うエリアを見つける)
という流れだ。
ニューヨークでは1960年代のSOHOあたりから始まり、Chelsea→Tribeca→・・→Harlemへと広がりマンハッタンのジェントリフィケーションは一巡した。
現在はマンハッタンの外へ広がり、Brooklynがジェントリフィケーション真っ只中。
この現象はアメリカが最も盛んだが、イギリス、フランス、カナダ、さらには南アフリカと世界中で起こっている。
思うに日本でこれが起きない理由は、「所得格差が小さい」「国土・都市圏が狭い」の2つである。
都心周辺で低所得者が暮らす不動産価値の低い地域というものが日本では存在しないし、都心エリアが狭いから倉庫街などがあっても倉庫としてちゃんと活用されているか、使われなくなったらすぐに別の用途に変わる。
そのため日本人にこの現象は理解し難いが、先進国の街が大きく変わる最もエイサイティングな現象だと思う。(莫大な投資でゼロから街を作り出す途上国の開発も好きだけど)
Williamsburg(Brooklyn)の変化
前置きが長くなったが、今回はNew York ブルックリンの中でも最も注目されている街 Williamsburgのジェントリフィケーションについて書いてみる。
New Yorkではすでにマンハッタンのジェントリフィケーションは一巡し、ブルックリンがその中心地になっている。
いま一番イケてるのはWilliamsburgであり、Bedford駅周辺らしい。
注:「いま一番イケてる」と書いたが、実際にはここまで開発されたら、カルチャー創造の先端にいるアーティストにとってはすでに大衆化されちゃって面白くないエリアにカテゴライズされているかもしれない。
初めてNYに行ったのは2004年、大学4年のときだった。
そのときから比べ、今回ブルックリンに到着する前に、ある変化を感じた。
「ブルックリンに渡っても地下鉄に乗っている人種が変わらない。」
ということ。
以前はマンハッタンからブルックリンへの川・橋を渡ると、電車内の人が少なくなり、やばい雰囲気をビリビリ感じたのを覚えている。それがいまではWilliamsburgなんかは観光地にまでなっているので、人でいっぱいだ。
マンハッタンの賃料が高騰しすぎて(ドアマン付きマンションで2BRは4500ドル=54万円だとか)、自然と周辺のブルックリン・クイーンズ・ニュージャージー・ブロンクスへと人が流れ、中でもブルックリンのマンハッタン側が人気で開発も盛ん。結果的にそのエリアはすでに賃料が高騰し、ちょっと前のマンハッタンと同じ水準に達している。おそるべしNew Yorkの地価上昇。
ストリートビューで見るWilliamsburgの変化(2007年 vs 2014年)
写真で見比べるとわかりやすいので、2007年と2014年でWilliamsburg(ブルックリン)がどのように変わったのか見てみよう。(ストリートビュー便利だなぁ)
1. Whthe Hotel(ワイスホテル)
元縫製工場をデザインホテルにコンバージョン。ウィリアムズバーグのランドマーク的存在。
2. Blue Bottle Coffee(ブルーボトルコーヒー)
話題のBlue Bottle Coffee。アメリカ東海岸第一号店で2010年にオープン。
3. Kent Avenue(イーストリバー沿い)のコンドミニアム
コンドミニアムもどんどんできている。
もういっちょコンドミニアム。
4. Shelter Pizza(シェルター)
あえて倉庫風に。
同様の比較はここにたくさんある。
ワイスホテルやブルーボトルコーヒーなどイケてるお店・商業が集積し、レザークラフトショップととカフェが融合したMarlow & Sonsのような新業態も多く見られる。
ジェントリフィケーションの流れの中で良いと思うのは、まだ高級化が本格化する前の段階で、新しい業態を試す人が出てきて、それがブレイクしてビジネスが展開されていくケースだ。感度の高い人が集まっているのに賃料が安いというのは、なにかクリエイティブなことを始めるためのマーケティングには最適な条件だと思う。
アンドリュー・ターロウ氏が手がける前述のワイスホテルやMarlow & Sonsがこうして有名になっていった経緯がまさに代表例だろう。
Williamsburgの賃料推移
賃料の変化も書いておこう。
Truliaのマーケット情報によると、Williamsburgの平均面積単価(Sqft単価)は2007年から2014年で約50%上昇している。もの凄い上昇スピード。
ジェントリフィケーションのデメリット
寂れた倉庫街がリノベーションされ、ハイスペックなコンドミニアムやオフィスビルが新築される。街はきれいになり、不動産価値も上がる。
ジェントリフィケーションには、こうして街が洗練されるというポジティブな変化がある一方で、もともと住んでいた住民にとっては賃料が高騰し追い出されるというネガティブな側面もある。
また、賃料以外にも地元住民は様々な面で不満が募る。
ブルックリン出身の黒人映画監督Spike Lee氏がこうキレている。
ジェントリフィケーションなんてひどいもんだ。うちの親父は1968年にBrooklynのFort Greeneに家を買って住み始めた。ジャズミュージシャンでギターをやってる。それが去年金持ちが引っ越してきて、ギターがうるさいと警察を呼ばれた。エレキじゃなくてアコースティックだぜ!1968年からやってんのに、いま2013年に入ってきた新入りが警察を呼ぶ?マジで意味がわからねぇ!来るのはいいけど、最低限のリスペクトを持って来てくれ。
資本主義大国アメリカでは価値観の異なる高所得者層が入ってきて、元から住んでいたローカルの人々が抑圧されてしまうのだ。
さらに、次なるジェントリフィケーションを求めて、不動産デベロッパーはWilliamsburgの東側にあるBushwickというヒスパニック系移民の町を、イメージ向上のためにEast Williamsburgと呼び始め目下開発中だ。
こうしたデメリットはあるものの、やはり街が劇的に進化を遂げるジェントリフィケーションは、とてもポジティブな現象だと思う。なんらかローカル住民との調和を図りながら街をアップデートしていく方法がそう遠くない未来にはできるような気がしている。
次回LA編に続く。