中国人の「日本買い」を中国人側で経験する


円安効果で「中国人が押し寄せ、日本を買いまくっている」というニュースを日々目にする昨今。

これはマジである。本当に買いまくっている。
先日、友人つながりで香港人の日本買いツアーに同行する機会があり、ものすごく興奮したので書き留めておく。接客する日本人側でなく、買いまくる香港人側の一員として歩いてみると、見える景色は全く違うのだ。

 

※広義の中国人(中華系アジア人)

前提の話として、今回同行したのは香港人であり、厳密には中国人ではないが、いま日本を買いまくっているのは中華系アジア人(中国人、台湾人、香港人)なので、広義の中国人ということで一括りにしておく。(当人からは怒られそうだが)

彼らは世帯を超えて、一家+親族もろもろで6-10人くらいのパーティでやってくる。今回の香港人御一行は、50代夫婦+その姉妹☓2、子供2人(20代)の6人組。皆フレンドリーで良い人だち。

 

全品40%OFFセール開催中

なぜ今なのか?それは当然、円安だからである。
2012年と2015年現在の為替比較で、人民元、香港ドル、台湾ドルは対円で約50%上昇している。つまり、彼らが日本に来ると、3年前と比べ全品33%OFFなのである。

さらに、昨年10月に対象品目が拡大した外国人の消費税免税を加えると、40%OFFとなる。これは買いたくなるだろう。

 

RMB_chart

出典:世界経済のネタ帳

 

午前中に新築マンション買って、午後はデパートで高級品を買い漁る。

同行したのは半日足らずだったが、彼らの購買意欲は恐ろしい。
ランチで合流した時にはすでに神楽坂の新築マンション(2LDK/5000万円)をお買い上げした状態で、パンフレットで購入した部屋の間取り図を見せてくれた。

「で、これって数年したら高く売れるの?」

との質問にはしびれた。日本では不動産の価値は新築時がMAXで、その後下がり続けるのがセオリーだが、そんな事前知識も彼らには必要ない。とりあえず安いから買っておく、という感覚だ。

この「当たり前に未来は明るい」という発想は、新鮮でどこか心地よい。低成長を長年経験してきた日本人には想像しにくいが、この数十年右肩上がりしか経験していない中国人にとって、資産や給与は当たり前に上がっていくものなのだ。

ランチの後は、さらに投資用不動産を見に行くチームと、デパートへ行くチームに分かれた。

自分はデパート組のおば様方チームに同行したのだが、驚いたのが皆SUICAを持っていること。5000万円のマンションを一瞬で即決しキャッシュで買う人がタクシーではなく、電車移動とは新鮮。

 

買いたいものは事前に決まっている

日本橋のとあるデパートに着くと、ウィスキー、時計、ブランド化粧品と高級品を買いまくるのだが、面白いことに彼らはすでに買うものを具体的に決めているのだ。

例えばウィスキー響の21年もの。スマホで画像を見せてくれ、「これが欲しい」と。
驚いたのは、このデパートでこの商品が売り切れだったこと。空港でも売り切れだったらしく、とても残念がっていた。

中国人の中では口コミの威力が非常に強く、人から「良い!」と聞いた商品を目指して買いに来る。だから押し寄せる中国人がみな同じ商品を買いまくり、売り切れてしまう。

 

買いたい中国人と売れない日本人

買いたいのに買えない。なんてモッタイナイんだろう。これをビジネスチャンスと呼ばず何と呼ぶのか。

同じくデパートの時計売り場でも、「買えない」を経験した。
ある日本メーカーの置き時計(13万円!)を買うと言っている。売り場でカタログを見ながら「これ、いいでしょ?」と同意を求められたが、全くもって良くない。失礼ながらとても売れ筋とは思えないこの商品も、在庫がなくメーカーから取り寄せだという。

この時計も中国人が買い占めてしまったのか、全く売れないから在庫を持っていないのかわからないが、取り寄せは宿泊しているホテルに近い新宿の店舗で受け取りたいと伝えると、「では、その店舗に行ってオーダーしてくれ」と店員さん。うーん、モッタイナイ。

酒にしろ、時計にしろ、買うものが決まっているならばネットで買えばよいと思ってしまうが、偽物が当たり前の中国では、信頼できる場所で買うことに意味がある。信頼されているが、ニーズに答えられていないデパート。このミスマッチから学ぶところは多い。

 

アジアを市場として考える時代

11年前、大学生のとき、中国を1人で半周ほど旅したことがある。当時中国のワーカーの給与は現在の3分の1だったし、物価も安く円の強さに恩恵を受けていた。日本人バックパッカーにとってアジアは少額の「円」でエキサイティングな体験をできる消費の場であった。日本人はアジアにとって顧客だった。

当時、大前研一氏の「チャイナ・インパクト」を読み、将来はこの中国人が日本企業の主要顧客になる時代が来ることを想像するものの、にわかに信じがたくもあった。しかし、ついにその時代がやってきたのだ。

今では上海のマンションを一般の日本人はとても買えないどころか、国内を見ても東京の高額な新築分譲マンションは蓋を開けてみると購入者の半数以上が中華系だったりする。中国人が日本で消費する時代だ。

親族が日本にいる、子供が日本に留学した、などなんらか日本に縁のある人々から訪日旅行・対日投資が増え始め、今ではなんの縁もなかった層まで活発になってきた。

言葉の壁、在庫マネジメントやマーケティングのミスマッチ、など様々な課題を解決する過程でも新しいビジネスがどんどん生まれていくだろう。

友人が始めた学生向けのアジアインターンプログラムも面白そうだ。いま大学生なら、バックパッカーよりこっちの方がいいかも。そんなこんなで、自分もいよいよ海外へ出る覚悟をした次第。