作りこみ過ぎない木の内装は、気取り過ぎずふらりと立ち寄りやすい。
「本当に真っ暗なんですね」
物件に足を踏み入れた時のUさんの第一声は、こんな感じだったと思う。
それもそのはず、大名郵便局のすぐ傍にあるその建物は、外観こそアメリカは西海岸を思わせる白い壁で印象に残るものの、接道面に対してやたら細長く。正面に入っているアパレル横のアプローチを一番奥まで進んで、2階に登った隠れ家のような空間に、更に窓と言う窓を全て塞いだ何とも怪しげな空間だったんです。
募集のタイトルは「暗闇に光を」。(フラッシュが光るまで見えないので)ほぼ勘でシャッターを切りました。
いくらBARとは言えこんな真っ暗い箱はどうにも使いようがない・・・そう思われる方ももしかしたらいるかも知れません。でもそこは飲食店での経験を積んできたUさんです。
テナントはあくまで箱であり、内装次第でガラリと雰囲気を変える女性のお化粧のようなもの。だからこそ業種によって異なる「立地と広さ」のW条件を抑えた上で、次にご説明しようとしていた
・実は窓に打ち付けたコンパネを外せば、暗さは容易に解消すること
・怪しげなカーテンの上には、天井のない小屋裏が隠れていること
これらをあっさりと見抜き。次の瞬間には、ここにボトルを並べて、やっぱりこっちがカウンターかな・・・とレイアウトや厨房設備の重量に関するご質問を頂けたことが、とても楽しかったのを覚えています。
(左)BARの命とも言われるカウンターは古木を再利用したもの。
(右)トイレには以前のお店のサインがちらり。この日も当時の常連さんが入れ替わり立ち代わりOPENを祝いに来てました。
(左)長い共用廊下も、夜間はまるでお店への専用アプローチに。
そしてまだまだFOODメニュー等が追いついてないから・・・と、静かにOPENしたお店に顔を出したのが今月の初め。
新形態が次々と現れては移り変わってゆく飲食業界。若い人にとっては、BARにはイマイチ馴染みがない、常連さん達の溜りになっていて足を運びにくい、なんてイメージがあるかも知れませんが、そうした常連さんも含めて誰でもフラットに仲良くなれてしまうのが、お酒の力であり、BARの素敵なところです。
久しぶりのカウンターワークに体が追いつかなくてと笑うUさんでしたが、そんなUさんやお客さんの笑い声に、新しい光が入ったことを確信して取材終了。心地よすぎるお喋りに時間を忘れてしまったことは否めません。
でもきっとまた行ってしまう。改めてBARっていいものです。
〈店舗情報〉
BAR SLOW DAY
福岡県福岡市中央区大名1-11-27 (ARK-GALLERY2F奥)
営業時間 20:00-4:00