大それたタイトルにしてみましたが、ほんの軽い世間話です。
福岡R不動産で多くのリノベーション物件を紹介していることもあり、賃貸物件のオーナーさんからリノベーションの相談を受けることが多々あります。
リノベーションを検討するというのは、建物が古くなり現状のままでは借り手が見つからない、という悩みから始まることが多く、すでに数年間空室のままなんてことも少なからずあります。
賃貸物件のオーナー業というのは、所有物件を商品とした事業経営なので、リノベーションという比較的大きな投資をするからには、そのコストの回収が不可欠です。
そのため弊社では、賃貸物件のリノベーションを検討する際は、リノベーション以外の手段も含めた複数の案を比較検討した上で決断するようにしています。
わかりやすく例で考えてみましょう。
ここに築35年の古くなったマンションがあり、そのうちの1室が空いているとします。
1年前に長く住んでいた入居者が退去し、原状回復(次の入居者が住める状態に修繕すること)はまだしていない状態なので、内装は結構ボロボロ。原状回復だけでも30万円くらいかかりそうです。賃料5万円で賃貸の募集はしているものの、全然借り手が見つかりません。
この時、この商品(空室)を売る(実際には貸す)ための手段はざっくりと3パターンくらいが考えられます。
1.原状回復しないで、ボロボロのまま貸す
2.原状回復して貸す(プチリフォームも含む)
3.リノベーションして貸す
実際には原状回復にしてもリノベーションにしても、なににいくらかけてどんな価値を創るのかによって投資額は異なるのですが(つまり、2と3の間に選択肢がいっぱいあります)、大きなカテゴライズとしてはこんな感じかと。
オーナーの投資額は1<2<3の順に高くなり
同じく賃料も理論的には1<2<3の順に高くなります。
まず、意外と1の選択肢は知られていません。
ボロボロのまま貸して入居者に改装費を負担させるなんてアリ?という気がしますが、入居者にとっては自分で好きな内装にできるメリットはあるし(特にマンションをオフィス使用するときにこのパターンのニーズがあります)オーナーにとっても、その入居者が退去するときには、ボロボロだった部屋が投資額ゼロでこだわりのある内装になって返ってくるというメリットもあり、実はwin-winなんです。(入居者が手作りで内装しちゃった例がこちら。)
今回の場合、5万円で借り手がつかない部屋なので、投資額ゼロなら、4万円で貸してしまおうというイメージです。
次に原状回復をする2の選択肢ですが、一般的には1と3を考えずにこれにしてしまうことが多いです。これはぼくらからすると、非常に残念。この選択肢、やめましょう。お願いします。と言いたいところですが、センスのよい原状回復が今後根付くとして、この選択肢もあり続けるわけです。
今回の場合、30万円の改修(原状回復)投資をして5万円で貸せるとしましょう。(厳密には5万円で1年間決まってないのでそれ以下である可能性が高いですが)
最後に、リノベーションする3の選択肢です。
ここで一番重要なのは、リノベーションすることで賃料が大幅に上げられる物件(エリア、特徴、大きさetc)であるかどうかの判断です。仮にリノベーションの費用=投資額が300万円としましょう。結論から言うと、その部屋が超カッコよくて他にない唯一無二の内装になったとして、8万円くらいで貸せないと、経済的にこの投資は成り立ちません。
今回の場合、300万円の改修(リノベーション)投資をして8万円で貸せるとしましょう。
簡素化してグラフで比較してみるとこうなります。
縦軸は収入の総額、横軸は時間軸です。
投資額300万円の場合、マイナス300万円からスタートして、毎年8万円?12ヶ月=96万円の収入になります。
こうして3つの選択肢を将来収益で比較してみると、それぞれのメリット・デメリットがわかりやすくなり、損益分岐点の目標をどこに定めるのかが見えてきます。
そして、リノベーションという選択肢をとるべきだという判断をする基準は3つくらいあります。まず、投資額(今回の場合300万円)の回収(グラフで累計ゼロになるところ)が3年前後であること。1-2年で回収できることはまずないですし(それはリノベーションではない)、5年もかかっては回収率が悪すぎという判断になります。
次に、10年単位で見た時に、1や2の選択肢の収入総額を上回ること。10年の根拠はいろいろありますが、例えば内装デザインのトレンドの変化がそれくらいで起こりえる、10年くらいで内装・設備は古びてくる、税法上の内装費の減価償却が10年、など。
最後のひとつはちょっとマニアックなので、次回に書いてみたいと思います。
と、こうして複数のパターンを比較検討した上で、リノベーションしよう!という判断になるわけです。
一応、いくつか注意事項を。
入門編ということでいくつかの前提条件や検討要素を排除しています。
実際にはもっと多くの要素を複雑に検証する必要があります。
また、リノベーションの判断基準を1部屋単体の投資対収益だけにしています。注目の部屋を1つ作ることでマンション全体の広報効果を高めるとか、建物全体の不動産価値は考慮していません。
あと、純粋にリノベーションって楽しいよね!っていう個人的趣向とかも。
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