Donation Partyという文化


アメリカに来て早いもので2ヶ月になりました。

カリフォルニアの気候は夏も冬も過ごしやすく、ほぼ毎日快晴という素晴らしいもので、悩みなんかなくなっちゃうというのも納得です。特に今年の冬は雨が降らず、シリコンバレーに住んで2ヶ月間、一度も傘を持ったことがないくらい。

さて、福岡R不動産コラム・海辺特急でも「【番外編】アメリカ・ユタ州発、学生の手で作る住宅の話」という記事を書きましたが、今回はアメリカの寄付の文化について書いてみます。

上記コラムで書いたのは、ユタ大学・建築学科大学院の課程にて、実際に学生が住宅を設計から施工まで行うプログラムについてでした。こうして作った住宅は、ネイティブアメリカンに寄付されます。そして、そういった目的があるからこそ、このプロジェクトには企業から資材の寄付や、ユタ州の富裕層からの寄付が集まり、それのおかげで成り立っているのです。

アメリカに来て気づいた日本との大きな違いの1つがこの「寄付の文化」でした。重要なのは、寄付そのものではなく、「日常的に富裕層・成功者が貧困層や若者を助ける文化」です。知っている人には今更かもしれませんが、日本では震災や特定の出来事・イベントに対しての寄付はありますが、「日常的」でなかったり、「特定」であったりします。

僕が滞在したユタ州パークシティという町は、スキーリゾートがあるため、富裕層が多く住んでいるそうです。人口7000人程度の小さな町ながら、町にはいくつもの美術館やギャラリーがありました。

この町に住む友人(町に唯一の日本人住民らしい)はデザイナーとして独立しており、年に何度かDonation Party(寄付パーティ)と呼ばれる美術館が開催するイベントに作品を出展しているそうです。Donation Partyでは、若手デザイナーを中心にとした作品を一同に集め、オークション形式で富裕層を中心とした住人が落札していきます。この売上はざっくり半分がデザイナーの収入となり、半分が美術館の収入となります。

重要なのは、
・若手デザイナーの作品を「買う」ことで彼らを育てていること
・売上の一部は美術館の運営経費、つまり寄付となること
・富裕層はこのパーティそのものを楽しんでいること

独立当初の食えないデザイナー・アーティストが育つ環境がしっかり文化によって確立されているのです。(もちろん結局食えない人もいるでしょうが)


今年はこんなのを作ったらしい(笑)

また、僕が住むシリコンバレーでは、GoogleやfacebookなどIT企業が多く、起業して成長した会社を数億円~数百億円で売却した富裕層がたくさんいるのですが、彼らは次の世代(基本若者)が起業するときに、エンジェル投資家になったり、メンターになったりして、成功することを助けています。(これをシリコンバレーのエコシステムとも呼ぶ。)この文化も、種類は違えど、「富裕層・成功者が貧困層・若者を助ける文化」そのものです。

つまり、なにが言いたいかというと、こういったアメリカの良い面はどんどん日本に入ってくると、いいなーと。

今年のプロジェクトで、福岡にギャラリーとスモールオフィスとレジデンスという複合ビルのプロジェクトを企画していますが、そこにもこんな文化を取り入れられれば、と。