プサンのアートシーン


博多港を出発するビートル
高速船「ビートル」で博多港からプサンへ

先月、人生で初めて韓国のプサンに行ってきました。福岡とプサンはとても近いとは聞いていたのですが、高速船で約3時間、飛行機なら55分と1時間を切ってしまいます。これは確かに近い。近すぎる。なぜ今まで行っていなかったのが自分でも不思議です。

初めて訪れたプサンは日本の街の清潔感とアジアの街の雑多な雰囲気が入り混じっている日本とアジアの中間という感じでした。そして何より大都会。福岡と同じぐらいの感覚でいたのですが、人口が340万人と150万人の福岡の2倍以上。正直、プサンのことを侮っていました。

今回の目的は、プサンのアートシーンの視察と福岡とプサンのアート関係者の交流・情報交換の場となっているAsia Art Producers Network Forumに参加すること。

小さなビルが立ち並ぶプサン・中央洞エリア
古くて小さなビルが立ち並ぶ中央洞エリア

まず、初めに訪れたのは、昔、プサン市役所やプサン駅があった中央洞エリア。
市役所や駅があった時代はプサンの中心地として栄えていたのですが、移転してからは寂れていき空室が目立つエリアに。また、古くて小さなビルが多い地区でもあります。福岡R不動産に載せたくなる物件がたくさんありました。

このエリアの活性化のために、プサン市は大胆な施策を行なっています。
増えた空室の対策のために、オーナーからプサン市が空室を借り上げ、その部屋をアーティストに無料で貸したのです。

アーティストのジャンルも幅広く、絵画に彫刻、音楽、ダンス、演劇、伝統芸能、映像、写真と表現に纏わるものであれば、何でも対象になり、さらに研究者も対象になることが珍しい。

期間は3年間で、全部合わせると300を超えるアーティストが所属しているそうです。

アーティストのアトリエだけではなく、作品を発表するためのギャラリーやダンススタジオ、音楽スタジオ、ミニシアター、文学カフェなどアートや表現に纏わるあらゆるものが空室を利用して整備されています。

プサン中央洞エリアでアーティストに無償提供されているギャラリー
ギャラリー


ダンススタジオ

プサン中央洞エリアでアーティストに無償提供されているミニシアター
ミニシアター

$プサン中央洞エリアでアーティストに無償提供されているアトリエ
アトリエ

プサン中央洞エリアでアーティストに無償提供されている木工工房
木工工房

プサン中央洞エリアの文学カフェ
文学カフェ

また、このプロジェクトをきっかけに中央洞エリアで文学カフェを始めた方は、物件と地域を気に入り、入居したビル自体を買ってしまったそうです。このように3年間限定ですが、その後、このエリアを気に入り留まる人が増えていけばいくほど、より魅力的なエリアになっていきます。

文学カフェが入っているプサン中央洞エリアのビル
文学カフェが入っているビル。ちなみに日本円で3,000万円ほどだったらしい。

そして、このプロジェクトの影響で、それまで寂れたイメージだった中央洞エリアにカフェがどんどん増えています。寂れた地域にアーティストが集まりアトリエを構え、その後、カフェやギャラリー、お洒落なショップが増えていき、人気エリアに変貌する事例は、ニューヨークのソーホーやベルリンのミッテ区など、世界中にあります。

まさに今、同じようなことがプサンの中央洞で起きています。しかも、上記の2つはアーティスト主導で結果的に人気エリアになった事例なのですが、中央洞は行政主導で行われ、成果が出始めていることは今までにあまりない事例です。

中央洞を見て回っている間、福岡でも、天神北や大宮・白金・高砂エリアなどで同じような動きができないか妄想が止まりませんでした。

プサンのカフェ
町のあちらこちらにカフェが

プサンで見聞きしてきたものは、まだまだたくさんあるのですが、長くなるので今回はここまで。この続きは、次の僕の順番で。お楽しみに。