この仕事をしていると、年間数百、データのみなら数千(万かも)
当物件はまさにその最たるもの。
「ゼロ古民家」というタイトルで紹介していたのですが、 その由来は立地の分かりにくさにあります。
メインストリートから脇に入る裏路地で、 サイドはビルでがっちりガード、 お隣の飲食店のアプローチをスルーしてバックヤードまで進まなけ ればその姿を拝むことはできないという代物。 物件自体のパフォーマンスは高いものの、視認性ゼロ、 接道ゼロの隠れ家を通り越した超隠蔽物件だったのです。
物件自体のパフォーマンスは間違いなく高いものの、 やはり店舗や事務所で使うテナントである以上、 せめてもう少し目につく場所にありたいですよねという不安は見事 に的中。事前のアナウンス空しく、「いや、 ここまで分かりにくいとは、、、」 という無言の視線を案内の度に浴びておりました。
掲載から3ヶ月ほど経ったある日のこと。
メールのお問い合せから直接現地を案内することになり、 待ち合わせ場所に現れたのが恵谷さんと龍石さんのおふたり。
とにかく笑顔が印象的だったのは、初めましての瞬間から、 立地的なネックを目の当たりにしながらも最後まで表情が曇らなか ったから。もう素直に「この人達がここを変えてくれるのかも」 と思いました。
聞けば、おふたりは大名の老舗レコード店に勤務しており、 独立するにあたって物件を探してい最中。また、 その業態の特性としてレコードが好きな方はお店が少しくらい分か りにくい場所(今回のはかなり分かりにくいですが) にあっても探してきてくれるとのことで、 ようやくこの問題児の引き受け先が決まった訳です。
レコードショップにはカフェスペースも併設するということで、お ふたりとスプモーニの有吉さんを中心に、 お友達を巻き込んでの大掛かりな改装になりました。もちろん、 自分たちのお店を自らの手でという喜びは大きいものの、 築年数も気合いの入った古民家の改修はやはりそればかりではあり ません。
2階の天井をぶち抜く作業から始まり、不要箇所の解体撤去、躯体 の補強、補修に次ぐ補修、造作に次ぐ造作で、恵谷さんにいたって は10キロ近くも体重が落ちるというハードワーク。
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また、 当初カフェスペースと聞いて軽食程度と想定していた1階部分はか なりしっかりした食事も提供する方向に舵を切ったため、 そのあたりの準備も大変だったかと思います。
そんなこんなで、ようやくお披露目となったのが今月。
築50年を数え、 ビルの隙間でひっそりと朽ちるのを待っていた2階建ての古民家は1階に恵谷さん率いる「食堂ポンテ」、 2階には龍石さんが展開する「カラヴィンカ・ミュージック」 を以て見事に再生を果たしました。
「食堂ポンテ」 がさり気なく営業を始めたとのことで覗いてみると、 プレオープン中にも関わらず既に大盛況。
見ての通り、気持ち良い空間に生まれ変わった店内。 またそこに流れる恵谷さんセレクトの音楽がとても心地良いのです 。
お酒の種類も豊富で(特に日本酒とワインのラインナップはヤバい)、 今後は音楽イベントも定期的に開催するとのこと。
ちなみに、後日、グランドオープンからスタートしたランチですが、 個人的にこのランチにはガツンとやられました。もう、 滅茶苦茶やさしい味。
ご飯を食べるということは当たり前の習慣になっている訳ですが、 純粋に食事を楽しむとか、味わうというのは「これか!」 と思いしらされます。映画「かもめ食堂」を彷彿させるランチ、 1日25食限定。おすすめです。
改装前は少し窮屈に思えていた2階ですが、水回りを取って、 天井を抜いたおかげで随分と広く感じました。 活かせるとこは活かしつつ、 オリジナルの味付けにセンスが光ります。
音楽が好きな人が集まってもらえるように、 と瀧石さんが言っていたお店にはこの日も楽しげにレコードを選ぶ お客さんの姿が。
実はこれ、ひょうたんからつくったスピーカーで、その名も「 ひょうたんスピーカー」といい、 普通のスピーカーよりも柔らかい音の鳴りで、 長時間聴いても疲れないとのこと。また、何より驚くべきはこの「 ひょうたんスペーカー」、龍石さんが種から育てたハンドメイド。 愛情とこだわりと技術が詰まった逸品です。
とにかく場所が分かりにくいということで、自信はあっても、 実際にオープンするまで不安があったというおふたり。
しかし、オープン後は仲間が仲間を呼び、 自然と人で賑わう店内で一緒に笑っている姿は、 初めてお会いした時と同じで、曇りないものでした。
立地については分かりにくい分、たどり着いてもらえば大切にしてもらえる感じ。
そんな素敵なことも兄貴達は言ってくれました。
物件もいろいろです。
いい点、わるい点、それぞれあるにせよ、
結局最後は人なんだなと、今回、改めて思いしらされました。