私のお気に入り


はじめまして、乙倉(オトクラ)と申します。

岡山で生まれ育ち、福岡に来て3年目になります。

数か月前、きびだんご(袖の下)を武器にDMXに飛び込み、今は企画や設計・デザインを担当させてもらっています。

 

 

これを機に我が半生を振り返ってみようとも考えましたが、真面目さが取り柄の私から、おもしろエピソードが出てくるのは期待できません。

 

そこで、今日はオトクラが世界で一番大好きな建物をご紹介します!

 

 

 

 

何を隠そう、私は無類の小屋好き。

集めた画像は数千枚、この目で見た小屋の数800棟以上。

小屋マニア、小屋フェチ、小屋ニスト、今時の表現なら「小屋系男子。」とでも言うのでしょうか。広大な自然の中に静かにそして謙虚に佇むあの立ち姿。雨にも負けず、風にも負けず、私たちを守ってくれるあの厚い胸板(外壁)。時間が経つほどに味わい深い表情を見せてくれます。

小屋、ほんとにカッコイイ。沁みます。

 

この偏った愛情がたたって、大学の研究室時代は漁村集落に入り込み、水辺の小屋のフィールドワークに明け暮れていました。

 

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これが、当時の研究対象。

私の実家から自転車で10分程のところにある、「四ツ手」(よつで)と呼ばれる小屋。小屋の先端に四つ手網が取り付けてあり、これを上下させることでランプの光に寄って来た魚を掬い上げるという仕組み。漁といってもセイゴやハゼ、ベイカなど小さなものばかりですが、

 

 

 

\\利 用 シ ス テ ム が 面 白 い ん で す //

 

 

 

なんと、一晩(昼過ぎ~翌昼ごろまで)、たったの6,000円程で1棟借りられるのです。6畳くらいの大きさから20畳以上のものまで、見た目もサイズも様々。

まさに、超ローカルなAirbnb。

※電車もバスも遠いですから、だれも来ないでしょう。

 

そして、小屋に置いてあるものは基本的に自由に使ってOK。

水道・電気はもちろんのこと、コンロや調味料(いつからあるのか不明)、テレビにコタツに扇風機、なーんでも揃っています。お風呂がついている小屋だってあります。完全に住めます。誰かが酔って忘れていった靴下なんかが落ちているのはご愛嬌!バーベキューをするもよし、のんびり釣りをするもよし、酒盛りをするもよし。そして忘れたころに四つ手網を上げてイカの踊り食いをするのが鉄板。

持ち主さんや隣の四ツ手利用者さんから差し入れをもらえることもよくあります。

 

四ツ手を媒体に、道具や食べ物、場所、楽しい時間を、知らない誰かと共有する文化、これが非常に面白い。

 

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なぜこんな空間が発生したのか。

これは個人的な見解ですが、「網漁=待つのが仕事だから」。日射や雨風を凌ぐだけでなく、居住性を高めたり、娯楽を充実させたり、誰かとコミュニケーションをとる場所になったり。

何十年もかけて、気づけばこんなに快適で不思議な空間に更新されていきました。

 

ちなみに四つ手網漁、原型はこんな感じ↓。

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片っ端から実測調査をしましたが、間取りから使われている材料までひとつひとつ持ち主さんの色が出ていて全然飽きない。手作り感満載、思い思いにカスタマイズされた空間、壊れたら自分で直し、好きなものを飾って、好きな仲間とゆっくり過ごす、四ツ手でしか味わえない時間が流れています。

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岡山城、後楽園、倉敷、桃にマスカット、だけじゃないんです。ここはほぼ地元の人しか知りません。梅雨明けから秋の終わりにかけてが本格シーズン。

 

ディープな岡山の一夜が体験できること間違いなし。

 

全然伝え足りませんが、あとはぜひ現地でご堪能ください。

 

 

 

 

 

 

私も幼いころから友人や家族たちで集まって四ツ手で遊んでいました。1.8kmある海岸に沿って、漁火が波間にたゆたう姿は、間違いなく私の原風景の一つ。70棟ほどあった四ツ手も、今では20数棟になりましたが、地域の憩いの場所として今もゆるやかに機能しています。実は、私の同級生も1棟所有していて、夏、帰省したらみんなで集まる場所の一つ。

 

これから新しく建てることは出来ないけれど、大切に守っていきたい、私のお気に入りです。

 

 

 

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追記

実は私も小屋がスキ!という皆さん、「小屋部」部員募集中です。

九州にも変わった小屋、たくさんありますよ。